太陽光発電を設置する適地の減少、全量固定価格買取の制度が終了したことで、太陽光発電投資の新規物件が減少して久しい現在。
中古物件も思うようには出回っておらず、投資家の皆様は投資先探しに苦労してる事でしょう。
更には、国の後出しジャンケンによる政策変更の連続により、出力抑制の制度が改悪されることで、太陽光発の所有環境が悪化し続けてきました。
特に、多くの太陽光発電が設置されている九州地方では、出力抑制が頻発しています。
出力抑制が頻発する状況下において、全地域まで出力抑制の可能性が広がってしまった環境変化を受けて、投資家はどういった心理となっているか?
早速、売却動向等を見ながら解説していきたいと思います!!
1.太陽光発電の売却動向データを見る(グッドフェローズ調べ)
太陽光発電所の売却動向を分析したデータをグッドフェローズの調査により示されています。
太陽光発電所の売却件数を見ていくと、2022年までは緩やかな増加傾向でありましたが、2023年に入って急激に増加し始めました。
※グッドフェローズ調べ
2023年の売却増加率は、2022年に対して全体で2倍のペースで増加だったものが、直近3カ月に限っては更に売却件数が増加し、前年比で約3倍まで売却ペースが増加しています。
これは、社会経済情勢・環境の変化により、劇的に太陽光発電投資家の心理状況が変化したことが感じ取れます。
この傾向が今後も続くかは、太陽光発電の国の政策変更など、売電環境の変化が関わってきますが、グッドフェローズの見立てでは、「インボイス制度の開始」「大規模出力抑制」「出力抑制エリアの拡大」が要因と整理しています。
こんな状況では、確かに手放すことを検討しちゃいますね。
①電力管内ごとの売買動向データを見る
電力管内別の売却依頼比率のデータでは、九州が26.37%、関東が21.56%、中部が15.26%、中国11.28%、関西9.95%、四国・その他15.6%となっており、九州・関東・中部の3エリアで、60%以上を占めています。
※グッドフェローズ調べ
これまでは、関東エリアが全体的に多い傾向だったようですが、直近の傾向としては、九州電力・中部電力管内で行われた出力抑制などの影響により、所有者が嫌気して売却する人が増えているとのこと。
そういった要因もあり、売却依頼都道府県別ランキングでは、1位鹿児島県54回、2位千葉県41回、3位宮崎県36回となり、九州エリアが特に売却依頼の多いエリアということが、実績表からも確認することができます。
※グッドフェローズ調べ
②売却相場動向を見る
売却相場では、全体的には相場が上昇中ではあるものの、出力抑制や台風などの災害などにより売電環境が悪くなっている地域、九州や一部の積雪エリアの価値は下落しています。
※グッドフェローズ調べ
当然投資家は、出力抑制による売電額が減るリスクは減らしたいですし、災害が多い地域は火災保険料も高くなるため、心理的に避けたいのは当然の流れです。
出力抑制量が増え続ければ売電収入も下がってしまうため、利回りが下がり、どうしても売却額が下がることは仕方がない事なのです。
今後についても、再エネが増えたことや原子力発電の再稼働などにより、今後も出力抑制量が増え続け、さらに価格が下落する可能性は否定はできません。
関東エリアにおいては、これまで出力抑制からは無縁だったこともあり人気が下がらず、価値が上昇しているのですが、出力抑制の対象外であった発電所についても出力抑制の対象へと政策が変更されてしまいました。
それによって、今後の発電所売却市場の雲行きは若干怪しくなってきており、所有するか売却するかよく検討する必要があります。
2.とはいえ、太陽光発電の今後の明るい話はないか
太陽光発電にまつわる環境は悪い方向に進んでいるようにも見えますが、明るい方向性も見えてきています。
関連記事:太陽光発電に取り組んだ人は勝ち確定!?「卒FIT買取単価上昇中」
1点目が、先日ブログでも書いた卒FITの売電単価の上昇です。
卒FIT買取単価が上昇すると、20年経過した後も、安心して発電所を持つことが可能となるのです。
現時点で、20年経過後の買取単価は7円程度が想定されていたものが、現在の買取価格動向からみると、すくなくとも倍の14円程度では売電できます。
原発の再稼働など社会経済情勢の変化によって上下動はあるものの、どうしてもインフレは進むことになるため、買取単価が下がり続ける事は無く、どちらかというと上昇する可能性が高くなるのです。
そして、
2点目が、国が推し進める地域間送電線網の整備です。
送電線網の整備は、すぐに進むものではありませんが、10年後にはある程度の目処が立っていることでしょう。
「電力広域的運営推進機関」は、2050年までに7兆円を必要とする整備計画をまとめています。
関連記事:全国の送電網強化に最大7兆円の投資必要 整備計画まとまる | NHK
送電線網が整備されれば、余った電気を送電することで、地域間の天候・発電の差を埋めることが可能となるのです。
3点目が、蓄電池の普及によるVPPネットワークの推進です。
現在、蓄電池はさまざまなタイプのものの研究が進められています。
その一つとして期待されているのが、全固体電池です。
全固体電池とは、電池の液体部を固体材料に置き換えた次世代電池で、近年実用化が進んできています。
VPPを実装するためには、各需要家施設に蓄電デバイスを設置することが必須であり、全固体電池によって蓄電池製造コストの削減が進み蓄電池の価格が大きく下がることで、VPPの社会実装が可能になるのです。
3.「2023年に入って太陽光発電の売却が2倍に増えている理由」まとめ
太陽光発電の売却が増えている理由は、「インボイス制度の開始」「大規模出力抑制」「出力抑制エリアの拡大」が3大要因となっています。
価格帯については、全体として中古市場の価格は上昇傾向にありますが、九州エリアにおける大雨の影響・中古市場の拡大の影響もあり、九州・積雪地帯では査定額が減少しています。
今後は、送電線網や蓄電池の普及により出力抑制を減らすことができれば、九州エリアの価格の上昇もあるかも知れませんね。
様々な環境の変化に臨機応変に検討し、売却するか、所有し続けるか考えていきましょう!